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幕末志士に続いて好きになった実況者グループが、ナポリの男たちである。幕末志士のチャンネル加入からナポリのチャンネル加入までの期間は3ヶ月程度で、これもまた割とすんなり決意した覚えがある。

というのも一つに、実況ファン界隈においてこの両名を並行して追っている視聴者が多数いたので、その存在を知るのに時間がかからなかったのだ。双方には何か共通するものがあるのだろうかと不思議に思っていた。

もう一つは、幕末志士がナポリの男たちについて直接言及していたからである。私は幕末志士のことを実況界隈のとんでもない奴らだと思っていたが、そんなとんでもない奴らが絶賛するグループは一体どれだけとんでもないのか?と非常に気になった。

そして忘れもしない、初めて視聴したナポリの動画が「企画会議」である。4人があまりにも穏やかに喋っているのと、そこはかとなく漂う余所余所しさに凄く驚いた。当たり前だ。私の中での比較対象が幕末志士しかいないからである。幕末志士を基準にしてはいけない、彼らの喋くりの方が異常なのだ、とこの時悟った。

幕末志士とナポリの男たちの大きな違いは、その関係性にある。幕末志士は小学生時代からの友達同士で組んだユニットであるのに対し、ナポリはそれぞれ個人で実況を行っていた者が集って出来たグループだ。しかも4人中3人が2018年をもって実況歴10年越え(内1名は11年)という、所謂「最古参」と呼ばれる人達である。ナポリというグループを結成した際、彼らは「友達」では無かったのだ(すぎるさんと蘭たんに限り実況を始めて間もない時期から交友があった)。

私は、幕末志士が不変の二人ならば、ナポリの男たちは諸行無常のグループだと思っている。現在と初期では、彼らの配信の空気感が全く違うことが分かるだろう。今でも時々ch結成前の配信を聞き返すが、実況グループらしからぬ覇気の無さというか、ぎこちなさを感じる。これはこれで独特な心地良さがあって、個人的には大好きなのだが。

そして2017年6月、グループ結成1周年を記念した24時間生配信が行われた。あの時のお祭り感は忘れられない。きちんとリアタイできなかったことは今でも心残りだが、当日は暇を見つければ配信画面を開き、4人がお喋りしているのを確認した。一日中、本当にずっとワクワクしていたのだ。24時間配信の大まかな内容は、蘭たんがドラクエ3をバラモス戦まで進めるというものであった。蘭たんはかつて「この4人では垂れ流しはできないだろう」と発言しており、実際にこれまで上げられているナポリの実況動画はコント風に練られたものが多い。企画にこだわり、面白く見せる為の趣向を凝らしていることが伝わってくる。しかしそんなナポリが、24時間配信で垂れ流し配信をし、かつ大成功を収めたのだ。それも、視聴者の予想をはるかに上回る展開だったのである。

また、配信内で振り返り動画を流した際、4人は全くしんみりせずたわいも無い話で盛り上がっていた。この時、ナポリは末長く続いていくグループなのだろうと強く感じたのを覚えている。わずか1周年、されど1周年、私が今見ている4人は、彼らの中で一番時間を重ねてきた4人なのだ。そしてこの先も彼らは、様々なことを共有して「ナポリの男たち」を更新させていくのだろう、と。

今年の3月には、4人の初顔合わせがあった。ch結成から数えると約1年越しの初めましてだ。視聴者が異様に心配している様子が可笑しかった。しかしナポリはそんな視聴者の心配をよそに、それはもう楽しそうにディズニーシーの思い出を話していた。何よりである。幕末志士の仲良しエピソードに胃もたれしたことはあれど、ナポリの仲良しエピソードをくらう日が来るとは考えてもみなかった。

以前幕末志士についても似たようなことを記述したが、ナポリの方向性に何かを危惧したことはないし、したくないと思っている。もっと距離を置いてほしいとか、仲良くしてほしいだとか、至極どうだっていいのだ。とはいえナポリのファンは、グループを組む前からの個人ファンが多いと思うので、彼らの動画や彼ら自身が変わってしまう気がして、寂しく感じる人もいるのだろう。その気持ちもなんとなく分かる。それはそれとして、彼らの親密性を考察すること自体視聴者のエゴ的感覚だと思ったりもする。どうしても実況者と視聴者は相互関係で成り立っているので、一方が一方に変化の素因を追及するのもおかしな話だ。動画の見せ方に妥協を許さないナポリと、視聴者としての身の振り方を考え込むファンは、自意識過剰な似た者同士だ。この実況者にしてこのファンありというか、双方面倒臭いのだ。しかし面倒臭いからこそ、ナポリも、ナポリを取り巻く全てにも愛着が湧いてしまう。それは手探りで不器用でしょーもない関係だ。私はそれが大好きなのである。

いつも視聴者の想像の範疇を超えてくるナポリの男たちは、今年の2周年記念にどんな企画を携えてやって来るだろう。彼らの変化をリアルで追うことができるのが、視聴者として一番楽しいところかもしれない。ナポリが今後どうなっていくのかは未知だが、彼らは常に画面の向こう側を一番に意識してくれている。そのスタンスが嬉しく、540円冥利に尽きるというものだ。移り変わり行く4人の唯一変わらぬところは、動画作りに対するストイックさだろうか。彼らのこだわり溢れる動画を、一度は見て欲しいと思う。真面目に馬鹿さを追求するおっさん達は、何故か妙に魅力的なのだ。

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